罰ゲーム 5日目

13/15
前へ
/247ページ
次へ
「晴にいちゃん…っ」 あたしは泣いた。 晴にいちゃんの力強い文字があたしの涙でにじむ。 晴にいちゃんはあたしに言った。 おまえはおまえだ、って。 晴にいちゃんの代わりになる必要はないって。 背負ってきたものが、すぅっと消えてゆく。 『俺を超えろ、陽菜』 晴にいちゃんがあたしに遺した、最後の言葉。 あたしはずっと間違えていたことに気づく。 晴にいちゃんになるんじゃない。 そんなんじゃ足りないんだ。 あたしが晴にいちゃんを超える。 超えてやる。 あたしが目指すのは、目指さなきゃいけないのはそこだ。 「晴にいちゃん…ありがとう…」 涙をふいて天井を見上げる。 「晴にいちゃんっ!!あたし、絶っっ対晴にいちゃんを超えてやるからーっ!!超えてみせるからーっ!!」 そして叫んだ。 天国の晴にいちゃんに聴こえるように。 「待ってろーっっ!!」 もう泣かない。 泣いてるだけじゃ、晴にいちゃんは超えられない。 …泣き虫陽菜は卒業だ。 「吹っ切れたのね」 いつの間にか、お母さんがケーキを持って立っていた。 「…うん」 「そう。私も見ていいかしら?」 あたしは黙って晴にいちゃんからの手紙を差し出した。
/247ページ

最初のコメントを投稿しよう!

353人が本棚に入れています
本棚に追加