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「誰だ!」
俺は狂ったように辺りを見回した。
しかし人影はおろか、何一つ見あたらなかった。
「説明してやろう」
再び声がした。
「お前という存在は、この世から消えて無くなってしまうのさ。完全なる無、全くの白紙という訳だ」
俺は気づいた。
この手紙がしゃべっているのだ。
こいつが本体だったのだ。
その時、その小さな紙切れは突然大きく広がり、生きているかの様に素早く動き、逃げる間も与えず俺を完全に包み込んだ。
そしてそれは俺を包み込んだまま、ゆっくりと元の小さな紙切れに戻った。
庭におちた一枚の紙切れは、やがてかき消すように、すうっと消えた。
この世に何一つ残す事のない、完全なる無。
・
「七日目」
恵子が会社から帰ってくると、郵便受けの中に手紙が入っていた。
封筒には恵子の名前だけが黒々と書かれていて、その中には「5」と書かれた小さな紙が入っていた。
終
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