第三話  もう限界だ

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不思議なことに三千メートル以下の地域の気圧、気流などは正常であり、そこから上の空間も引力などはそのままであった。 おまけに見た目もまるで空気があるように見えていた。 見上げれば空気のないはずのところにさわやかに澄みわたった青空が見え、そこにはぽっかりと浮かんだ白い雲がほのぼのと漂よっている。 その上考えられない事に、そこから時おり雨まで降ってくるのだ。 しかし実際のところは、空気は完全に無くなっていた。 もちろんその地域に生息していた生命体は、人間も含めてみんな仲良く死滅していた。 そしてさらに恐ろしいことに、突然できた宇宙空間との境――影響力はあるが頭が良いとは言いがたいある人が、それを安直にもデッドラインと名づけた――が、日に日に下降している事が判ったのである。 人々はパニックに陥り、高地に住む人々は平地へと避難した。 平地は次々やってくる避難民であふれ、混乱に拍車をかけることになった。 しかし、逃げ遅れる人も少なくはなかった。
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