第一話  彼女と海へ

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今年の夏も彼女と海に来た。 もう夕暮れが迫る赤に染まった海岸縁に車を停め、二人で話し込んでいた。 少し開けた窓から、少し涼しくなった風が、潮の香りと共に心地よく吹き込んで来る。 穏やかな時が、ゆったりと流れていた。 「私、喉、かわいたわ。ジュースでも買ってくるね」 のぞみが言った。 少し離れた所に、ぽつんとジュースの自動販売機が有る。 「ああ」 ひろしがのぞみに向かって返事をし、微笑んだ。 のぞみはハンドバックを持つと、機敏な動きで車を降りて行った。 若さに満ち溢れている。 ひろしはその後ろ姿を見ていた。 「そういえば」 ひろしは一人つぶやいた。 「去年の夏も、同じような事が有ったな」
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