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唐突にひろしが言った。
「もう、別れようか」
後はお決まりの修羅場となった。
泣きじゃくり暴れまわる今日子を、何とか実家まで送り届けると、ひろしは早々に家へと帰って行った。
その後何度も何度も今日子から電話があったが、ひろしは一度も電話に出なかった。
そのうちに、今日子からの連絡が、ぷつりと途絶えた。
・
今日子が海に身を投げた、という事をひろしが知ったのは、それから暫く後の事である。
ひろしは自分が原因だとは思いたくはなかったが、他に理由が何も見当たらなかった。
・
しかし秋にはのぞみと知り合い、冬には誰もが羨む仲となっていた。
ひろしは次第に今日子の事を思い出さなくなっていった。
・
ひろしは海を見ていた。
去年のあの時のように。
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