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不意にドアが開いて女が入ってきた。
「はい! ひろしぃ。オレンジとコーヒーと、どっちがいい」
ひろしは弾かれた様に振り返った。
そこにはのぞみではなく、今日子が座っていた。
瞳の無い眼でひろしを見て、真っ白い顔で笑っている。
ひろしの全身に怖毛が走る。
咄嗟にドアに手をかけたが、ドアは開かなかった。
開けていた窓が、まるで生きているかのように閉まっていく。
ひろしはドアに激しく身体をぶつけながら絶叫していた。
勝手にエンジンがかかり、ハンドルが回った。
車は静かに動きはじめた。
・
のぞみは両手に缶ジュースを持ったまま、呆然と立ちつくしていた。
車が走り出している。
おまけに助手席に知らない女が座っていた。
不意に女がのぞみの方へ振り返った。
ぞっとするような凍りついた笑みを浮かべて、のぞみに手を振った。
車はゆっくりと、そして真っ直ぐ海へと向かって行った。
終
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