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森を出よう。
俺は仲間たちに静かに告げた。
始めは皆突然言われたことを飲み込めず、しかし意味を理解すると、途端にざわつき始めた。
「故郷を捨てろと言うのか」
「木から下りたら天敵に襲われてしまうぞ」
「もう一度、奴らと戦おう」
「死にたくない」
様々な感情の飛び交う中、俺は声を張り上げて皆を説得にかかった。
お願いだ、皆聞いてくれ!
明日には完全に追い詰められ、俺たちは皆殺しにされる。
確かに木を下りることは危険だ。だが、このまま森に居ても危険なことに変わりないだろ?
遠い昔、俺たちの先祖は天敵から身を守り、容易に食料を手に入れるため木に登った。……還るんだ。俺たちは地上へと帰る。それだけだ。
俺は説得を続けた。結果、俺と森を出る派と、森に残る派に分かれてしまった。森に残る奴らは老いたじいさんばあさんが多かった。変わりに、俺の下には若い男連中や子どもが連れて行ってくれと寄ってきた。それと、森を出ることを決断した奴の家族がちらほら。
絶対、生き残るんだ。
俺は、そう決断を固めた。
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