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「あの……じゃあ行ってきますね?宋ちゃん……」
あれから朝食も食べ終え、数分過ぎた頃。
今は玄関で、仕事に行く母さんを見送っている。
あの後も母さんはぼーっとしたりソワソワしたり、誰の目から見ても落ち着きがなかった。
何だか寂しかった。
隠したい事は誰にでもある。だから無理に聞き出そうとは思わない。
でも今の母さんは隠していると言うより一人で抱え込んでいるように感じる。
悩んでいるなら言ってほしい。俺にも力になれる事があるかもしれないんだから。
「あのさ、母さん……何か悩み事があるなら俺、聞くけど……」
俺がそう言うと、母さんは目を見開いて驚愕の表情を見せた後。少し迷うような仕草をしてから徐に口を開き始めた。
「いえ、悩みと言うか……嫌な予感がするんです」
「嫌な予感?」
「はい……上手くは言えないんですけど……宋ちゃんが嫌な思いをするような気が……でも、思い過ごしだと思います。今度こそ行ってきますね?」
そう言った後、俺の返答も待たずに母さんは仕事に向かっていってしまった。
…………嫌な予感……
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