蝶の羽

1/19
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ

蝶の羽

 私は《私》が嫌いでした。  私はきっと、出来損ないの蝶々みたいな人間なのでしょう。蝶だからこそ美しいと褒められるけど、よく見たらその模様はすごく醜くて、とても弱い。  それを知ったら、私の本性を知ったら、誰もが失望するでしょう。だから私は、その醜さに気付かれないように、遠く高い所を飛ぶんです。  そして、高く飛び過ぎた私は、大嫌いな《私》と2人きりになったのです。  
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!