あの日見た鳩

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20年後。 「そして、このトランプをめくると!」 「ああ!僕が引いたカードだ!どうやったの!?」 真夏。きっと学生達は夏休みの真っ最中なのだろう。今日もまた、平日の午後から、誰も望んでいないマジックショーが行われた。 客はいつも決まってひとりだった。10才くらいの少年だ。 まるで、昔の自分のようだった。 マジシャンを目指して何年が経つだろう。この公園で、俺はマジシャンを目指そうと心に決めたのだ。 「おじさん、どうやったの?」 同じだ。昔の俺と。あのおじさんに、タネを教えてくれるようにすがったものだ。 「企業秘密だよ」 笑って言うと、少年は「えー」と落胆して俯いてしまった。そしてそのまま、少年は背を向けて帰って行った。
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