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「人を食べるって嫌なことですか?」
ほんの少し文章になりきれていない日本語で貴方が言う。
それは意外にも解読が難しい。
冬ももうすぐ去る季節。
寒いのは苦手だった。
ソファーや机も何もない四畳半のフローリングに直に座るのが冷たいから。
けれど、ただの箱のようなこの部屋が好きだった。
「美味しくないからね」
「道徳の話をしているんだけど。それは違犯ですか?」
違犯ですよ。松葉さん。
そうやってやんわりと微笑むと睨まれた。
緑色のカラーコンタクトが似合っている。
けれど彼女のフェミニンな格好には少しだけずれている気もした。
どこから見ても可愛らしい女の子なのに、ふと見つけたところで足を踏み外している。
そんな女性が松葉さんだった。
「人生は退屈だよ。だからこそ面白みがある」
「ポエムですか」
「独白です」
冷たいフローリングに足を投げ出して座った松葉さんは、さながら小さな子供が遊ぶ人形のようだ。
ふわふわした髪や洋服。
ただ緑色の瞳と眼光と、口から出る言葉がちぐはぐなだけで。
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