イカれてるよ

6/19
前へ
/25ページ
次へ
 食器の音だけが部屋に響く。 松葉さんは礼儀正しく箸を使い、小さな口をもぐもぐと動かしている。 僕はというと、銀色のスプーンを片手に松葉さんと麻婆豆腐を交互に見ていた。 「松葉さん」 「…」 「あの、」 「食事中はお喋りしちゃ駄目だけど」 僕の手をジロリと見ながら松葉さんが眉間に皺を寄せる。 それは悪いことをした、と肩を竦める。 「そんなに喋りたいか」 「いや別に」 「話を戻そうか」 何処に? と松葉さんを見上げる。 相変わらず礼儀正しく食べ物を咀嚼している松葉さんの頭の中は、やっぱり読めない。 「人を食べることは嫌なことですか?」 カシャンと箸を置いた松葉さんは、僕を通り越して天井を見上げた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加