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食器の音だけが部屋に響く。
松葉さんは礼儀正しく箸を使い、小さな口をもぐもぐと動かしている。
僕はというと、銀色のスプーンを片手に松葉さんと麻婆豆腐を交互に見ていた。
「松葉さん」
「…」
「あの、」
「食事中はお喋りしちゃ駄目だけど」
僕の手をジロリと見ながら松葉さんが眉間に皺を寄せる。
それは悪いことをした、と肩を竦める。
「そんなに喋りたいか」
「いや別に」
「話を戻そうか」
何処に? と松葉さんを見上げる。
相変わらず礼儀正しく食べ物を咀嚼している松葉さんの頭の中は、やっぱり読めない。
「人を食べることは嫌なことですか?」
カシャンと箸を置いた松葉さんは、僕を通り越して天井を見上げた。
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