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ごうごうと、真っ赤な炎が迫る。
陽炎のように揺れる向こう側で、何かが燃え落ちるのが見えた。
どこを向いても、赤、朱、紅。
それしか見えない。
「あつい!あついよぉー!」
泣き叫ぶ、子供たち。
すでに四方は炎に囲まれていて逃げ場はなく、体育館中を舐める炎は、まるで大蛇のよう。
「せんせぇー、あついよぉー」
泣く子どもたちを抱きながら、私も炎の熱さや恐怖で泣きそうになる。
でも、私はみんなの先生だ。私まで泣いてしまっては、子どもたちの不安や恐怖を余計に煽ることになる。
「光希ちゃん、心菜ちゃん、泣かないで……。きっと、助けが来るから……」
頭を撫でながら、私は不思議な感覚をおぼえた。
「…………?」
辺りは焔で埋め尽くされ、泣き叫ぶ子どもたちと、それを宥める職員のみんな。
………何だろう……何かが、おかしい。
「…………先生」
ふと聞こえた声に振り向くと、真っ白いノースリーブのワンピースを着た女の子が立っていた。
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