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意識せずして出た言葉に女の子は、
「そうであるかもしれないし……そうでないかも、です。私は、曖昧な存在なので」
そう言い、一歩近づく。
彼女の履いている真っ白なヒールサンダルが奏でる音が、嫌に響く。
「マスターからの命令です」
刹那。
炎が、ごうっと少女を飲み込んだ。
「えっ………ひっ!?」
一瞬唖然とした私に、火の粉が降りかかり、慌てて叩き落とす。
気がつくと、あの子が無傷で目の前に立っている。
「あなたに…永久の絶望と恐怖を……」
「っ!?」
少女の瞳が、いつのまにか私たちを包んでいる紅蓮の炎にも負けない真紅に変わっていた。
その真っ赤な瞳に射抜かれて、動くことができない。
そんな私に、彼女は小さく何かを呟きながら手を伸ばしてくる。
――――パチッ。
少女の指先が額に触れると同時に、何かが切れたように身体が傾く。
「アスカせんせいっ!?」
「えっ、ヤダ!アスカせんせぇ!!
薄れゆく意識の中、私が最後に見たものは
私の顔を覗き込み、泣きながら何かを言っている光希ちゃんと心菜ちゃん。
そして―――冷たく私を見下ろす、真紅の瞳だった。
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