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「それで?昨日はどうなったの?」
私の席に来ての開口一番がこれ。
愛季は期待を裏切らない。
「どうもこうも…結局巧君来なかったの。」
「えっ!?じゃあ昨日はあの誰もいない図書室で1人?」
「いやまぁ…そういうわけでもないんだけど…。」
そこで愛季は、面白いものを見つけた子供のように目を輝かせながらにっこりと笑った。
「何があったの?ん?おばちゃんにもわかるように説明してくれる?」
「おばちゃんって…。いや、昨日ね、巧君は来なかったけど、巧君が私に紹介したい人は来たんだ。」
「うんうん、それで?」
「それで…?いや、別にちょっと話しただけ。」
「じゃなくて!海衣の感想は?かっこよかった?かわいかった?どんな人だったの?」
「どんな人って…」
私は昨日の彼の姿を思い出していた。
綺麗な黒の髪、綺麗な顔立ち、細身の長身、そして、一度目があったらそらせなくなる寂しげな瞳。
ずっと見ていたくなるような、画になる人。
ねぇ、この気持ちは何?
待ち焦がれていたような、この感覚は何?
「海ー衣?何、ボーっとして。もしかして、一目惚れ!?あの海衣が一目惚れ!?」
「そういうんじゃないってば。私が一目惚れなんて、あるわけないでしょ。」
「えっ、そうかなぁ?人はみんな、誰かに恋する能力持ってるんだよ。海衣だって例外じゃない。そんな風に自分に嘘ついてたら、幸せ逃げちゃうよ?」
「だから、そういうんじゃないって。」
「ふーん。なんだ、つまんないのー。」
そうだよ。
これは恋なんかじゃない。
お気に入りのものを見つけた時と同じ。
ただ、それだけ。
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