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「今日もバイト?」
「うん。愛季は?」
「暇なんだよね。孝輝(コウキ)は部活だし。あー…私もバイトしよっかなぁ。」
「したら?あの駅前の可愛いカフェとかいいんじゃない?」
「そうだねー。あっ、今日海衣のバイト先お邪魔していい?」
「いいけど、どしたの?」
「記念日が来週だからプレゼント買いたくて。」
「またプレゼントか…。」
「えっ?また?」
「あっ、うぅん。こっちの話。行こ。」
孝輝っていうのは愛季の彼氏で、別の学校で野球部に入ってる。実は強豪校で甲子園出場常連校だったりして、孝輝君もスポーツ推薦だったらしい。
だからデートとかはあんまりできないけど、その分メールしたり電話したり家に遊びに行ったり…。
青春満喫中って愛季はよく言ってる。
まぁ私には縁がない話なのに違いはない。
「海衣ってさ、今まで本気で誰かを好きになったことあるの?」
突然真顔でとんでもないことを聞いてくるのは愛季の癖だ。
「さぁ?どうだろね。」
「なんかいまだにわかんないんだよね。海衣がドライなのは、本気の恋で傷ついたからなのか、本気の恋を知らないからなのか。あー、気になるー。」
「気にしなくてよろしい。」
「まぁ過去のことより今だよね。私、まじでメモの王子様が誰なのか調べるから。調査結果楽しみにしてて。」
「いや、別にいいよ。向こうから行動起こさないなら詮索するつもりないよ。」
「むー…じゃぁいいよ。わかっても教えないからね。」
「はいはい。」
結局プレゼント選びに何時間もかかって、孝輝君がわざわざ愛季を迎えにきた。あわててプレゼントを隠している愛季が可愛くて、孝輝君と私はしばらく笑いが止まらなかった。
「じゃあ海衣、また月曜にね。」
手を繋いで寄り添っている二人はとても眩しく見えた。
私にもあんな人が現れるのかな、なんて一瞬思ったけど、虚しくなって考えるのをやめた。
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