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閉じられた絵本
ウサギが目を真っ赤にして寂しさを訴えている夜
ネズミは葡萄酒をたらふく飲み仕事を放棄している
愛らしい少女は今日もにんにくの皮を剥く
誰の為でもない粥を炊き
干していた思い出を色褪せない内にとり込み
誰のせいでもない毎日の中で暮らす
時折誰かがふらりと訪ねて来るけれど
予想だにしていなかったにんにくの香りに立ちすくみ
現実に引き戻されて帰っていく
欲張ったドラムロールがいつまでも鳴り続けるものだから
二日目のマドレーヌの味を知らない少年のふくよかな腹に吸い込まれたがる人が後をたたない
風見鶏のため息と地下室の缶詰の深呼吸が重なる瞬間を見た王子様がさらわれてしまった日から
エンドロールはネズミと一緒に仕事を放棄してしまったのだった
楽器などリコーダー位しか触った事のない老人が音楽家を夢見る夜
不器用なお姫様は潰れたスポンジケーキの如き失恋を
生クリームで覆い隠して食べ続けている
愛らしい少女は今日も
あらゆる国のありがとうを唱えながら
にんにくの皮を剥く
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