四月

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四月

一月 一段とざわついているテレビ欄と白い猫がじゃれている 幸福を飲み込んだのか 怠惰を飲み込んだのか その後ろ姿は鏡餅のようにふっくらと肥えて 二月 尿の温かさだけを 頼りに生きた 三月 新玉ねぎの潔い白さに 嫉妬した 四月 もう随分と春の顔を見ていない いつも僕を騙していたあの人は 冬の間大事に飼っていた脇の毛を そろそろ刈り始めている頃だろう 幼い姉弟が何らかの芽を持ってうろうろしている しばらくしたら新しい名前をつけるに違いない それはきっと、この先僕がもう、見つけることの出来ないものだ 肩で風を集めるようにしてぐるぐる歩く 南風になる準備はとうに出来ているけれど 春はまた顔も見せずにノックだけして過ぎ去っていく  
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