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化粧をしていると後ろに父が現れ新聞を読み始める (決して振り向かない) ギラギラと照りつける太陽がまだ私を保っていた 鏡の中にうつり込んだ父を(アイラインを引きながら)見つめる こうやってちゃんと顔を見たのはどれくらいぶりだろうか 「お前少し小さくなったんじゃないか」 父が顔を上げずに言う そうかしら? そういえば年々小さくなっているように感じる (アイラインが上手く引けない) 体ではなくもっと別のところが 「お前、今年、梅酒を作り損ねたんだってなぁ。まあいいじゃないか、来年の楽しみが一つ生まれたんだ。なぁ?(だから死ぬなよ)」 そうかしら?そうかちら?そうなのかちら? 「おれの楽しみはこの新聞の四コマ漫画でな、毎日毎日これを楽しみに起きるんだ。はっは」 家、新聞とってないでしょう?と言って私が振り返ると 父は秋風にさらわれて消えてしまった 新聞と共に 私はいつまでタオルケットを握り締めているのか くしゅんとクシャミをしたら 本当に、本当に夏が出ていってしまいそうで 急いで窓を閉めに走った  
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