11人が本棚に入れています
本棚に追加
宙に浮かんだ成れの果て
巣から落ちた雛をジャンプして乗せようとしたそのはずみ
雛は無事に乗ったものの
僕は大きな木に頭だけ引っかかってしまった
どうやら浮いているようだ
強い風が吹く度首が締まっていく嫌な感触がする
何人か通りかかったが
こんなご時世誰も空を見上げようとしない
僕の体にぽっかりと空いたままだった空洞には
別の鳥達が住み着いた
幾分伸びた髪は枝や葉に絡まり始め
時々雨から雛を守ったりしている
優しい木々のざわめきはそれだけで
良い子守歌のようで
僕はずっと手に入れられなかった安眠に身を委ねて眠った
一体なんでこんな事になったのだろう
そういえばあの日もいつもの様に下を向いて歩いていたんだっけ
ああ全く思わぬものを
見つけてしまったもんだ
今更ぼやいても仕方ないが
僕の首は着々と長さを更新し始めている
下りる術を考えなかったわけじゃない
ただいつの間にか
この木になれるような気がしてしまったんだ
そんな気がしてしまったんだ
月日の流れと共に
体は日に日に鳥達の養分になって
僕の原型ももうすっかりない
地面を走るその感触
見事に忘れてしまった
この木にはなれなかったけれど
僕は何とか餌になる事に成功し、雛を3羽巣立たせた
今も生きているかは知らないが
最初のコメントを投稿しよう!