第十四章

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◇◇◇ 「はぁ~……」 無意識のうちに出てきたタメ息。 さっき駅前でたまたま見掛けた葵。 一緒に居たのはひとりの男。 確か葵のクラスメイト……。 文化祭の時に会った筈だ。 葵が『慧ちゃん』とそう呼んでいた。 葵が見たこともないような顔で話していた。 照れ臭そうな、恥ずかしそうな、それでいて嬉しそうな……。 ……彼が葵の好きな人、なんだろうか。 チラリと向けた視線の先、机の上に置かれた写真たての中でウェディングドレスをまとい微笑む葵。 その隣には微笑む俺、恥ずかしそうで幸せそうな茜、鉄仮面の翼。 「はぁ~……」 再び無意識に漏れるタメ息。 「何だって言うんだ……」 どこかモヤモヤした気持ち。 くしゃくしゃと前髪を乱してみてもその疑問の答えは出ない。 腰掛けていたベッドにそのまま倒れこむ。
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