第十四章

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痛む胸には気付かないふりをした。 気付いてはいけない。 そんな気がしたから。 葵はいつ俺に告げに来るだろうか……。 何だか死刑執行を待つ死刑囚の気分を味わっているような気がした。 ……なぜ? 何故そんな気持ちになる……? 確かに葵と一緒にいるのは楽しかった。 茜への気持ちを一瞬でも忘れられるくらいには。 茜と翼が一緒にいるのを見ても胸が痛まなくなるくらいには。 ふたりを心から祝福してやれるようになるくらいには。 茜を見ても痛まなくなった胸。 葵の事を考えると痛む胸……。 これ以上考えてはいけない。 そんな気がして考えるのをやめた。 そのまま意識は闇の中へと誘われ、落ちていった。
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