第十五章

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鞄に勉強道具をまとめてコートを羽織る。 春に向かっているとはいえ、まだまだ寒い季節が続いている。 コートはまだしばらく手放せそうにはない。 日が落ちて暗くなった道を一人歩く。 寂しさが不意に湧き上がり、寒さと相まって思わず身震いする。 「翔にぃ~!! 」 後ろから聞こえてきた声に振り向く。 こちらに向かってくる葵が見えた。 大きく手を振りながらこちらに走ってくる葵に足を止め、追いつくのを待つ。 「翔にぃも今帰り? 」 横に並んだ葵が首を少しかしげる。 「そう。図書室で勉強してた。」 「そうなんだ。一緒に帰っていい? 」 「あぁ、もちろん。」 笑顔で聞いてくる葵に俺も笑顔で返す。 上手く笑えているだろうか……? とうとう終わりを告げられるのだろうか。 そう思うと心臓がドクンとひときわ大きく脈打った。
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