第十五章

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何だかこうして葵とふたり歩くのが久々な気がする。 学校に登校する時は葵に朝練があって別だし、帰りも別のことが多かった。 俺が受験生と言うことも1つの原因だろう。 休みの日もほとんど遊ぶことはない。 ふたりで最後に出かけたのはいつだったか……。 「なんか久々だな……。」 「そうだね~。」 ポツリと呟くとその言葉を拾った葵から肯定されてしまった。 「いつ以来だろうな、一緒に帰るの。」 「う~ん……。」 しまった、と思った。 最後に一緒に帰った、それは葵とクラスメイトの男子が一緒にいるのを見かけたあの頃のこと。 自分から話題を振ってしまった……。 そう思ってはみても、言ってしまった言葉を取り消すことは出来ない。 これで終ってしまうかもしれない……。 葵と過ごすこの心地良い時間が……。 この落ち着く時間が……。 でも……これでいいはずなんだ。 葵には幸せになって欲しいんだから。 ズキズキと痛む胸は無視をして覚悟を決めた。
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