第十五章

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後悔はしたくない。 あの日確かにそう思ったがなかなか行動に移すことは出来なかった。 葵には好きな人がいるはずで、辛い恋をしていたはず。 そして多分、今も好きな人がいる。 辛い恋から立ち直ったのか、立ち直ろうとしているのか新しい恋を見付けたはずなんだ。 あの時……学校帰りクラスメイトの男子と一緒にいた葵を見かけた時に感じた痛みはやっぱり本物で、彼女に好きな人がいると思うだけで胸が痛む。 後悔したくない。 でも、怖い。 どちらも自分の本当の気持ち。 好きだと告げてしまいたい。 でもフラれるのは分かっているのに……? 彼女を悩ませてしまうかもしれないのに……? そう考えると身動きがとれなかった。 葵に悲しい顔をさせたいわけではない。 苦しい思いをしてほしくない。 辛い思いをしてほしくない。 傷付けたくない……。 ごちゃごちゃと考える。 考えれば考えるほど思考は絡まりほどけなくなっていく。
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