第十五章

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俺が自分の気持ちに気付いたあの日以来、何だかんだ葵と一緒に帰る事が増えた。 部活終わりの葵と時間を合わせて一緒に帰る。 相変わらずぼーっとしてしまう事も多いが、一応図書室で勉強しながら葵の部活が終わるのを待つ。 図書室の窓際の席が定位置になりつつある。 視線を窓の外に向けるとグランドの様子がよく見える。 部活をしている葵がよく見える。 一生懸命走っている姿も友達と楽しそうにふざけている姿も。 時々葵もグランドを見ている俺に気付いて手を振ってくる。 それに手を振り替えすと満面の笑みが返ってくる。 嬉しいと思うのと同時に感じる苦しさ。 その笑顔は俺に向いているのに、葵の想いが向いているのは俺ではない。 勘違いをしそうになる。 葵は俺の事好きなんじゃないか、って……。 止めてほしい。 でも止めてほしくない。 矛盾した気持ち。 恋は矛盾で満ちている。 嬉しいけど苦しい。 楽しいけど寂しい。 一緒にいたいけど辛い。 幸せになってほしいけど……。
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