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しかし、今は通りに人影はなく町全体が異常な程に静寂に包まれている。
街灯の光はいつもよりも弱々しく、観光地である普段の町の風景からは遠くかけ離れていた。
まるで、違う世界に迷い込んでしまったような感覚が少年の心を精神的に追い詰めていく。
それでも少年はがむしゃらに足を前に突き進めていく。
辺りの店や宿の窓からは明かりが確認出来るが、そこから肝心の人がいる気配はしない。
一昨日に七歳の誕生日を迎えたこの幼い少年でも、この町で『異常』な事が起きていると理解するには十分過ぎる程だった。
いや、町から人がいなくなった事にも、『異常』なことが起きている事にも少年はとっくに気が付いていた。
何故なら少年は二〇メートル程先に弱々しい街灯の光と月光に照らされながら立っている『異常』なアレから逃げるために大声で助けを叫びながら走っていたのだから。
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