零へ還す波

入部

｢陸上部に新しく入部しました、青木知紘です。中学では野球部だったので投擲をやりたいです！よろしくお願いします｣

声を張った後、これから二年半、刺激的な毎日を送ろうと淡い期待を抱きながら、軽く頭を下げた。

俺を歓迎する拍手が下げた頭の上から降ってくる。

『陸上部』

野球部の無い高校に進学した元野球部員の八割は陸上部に落ち着く。

そうでない元部員も陸上部に所属する人が多い。

……というのは俺が通っていた中学の野球部の中では有名な話だ。

俺達の代では十四人中三人しか野球を続けていない。

俺はその十一人の内の一人である。

｢ええと、じゃあ他の一年の皆は青木君に自己紹介してあげて｣

まだ名もわからない先輩がそう促した。