Il mio tesoro

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 だから先生にちょっときつめの口調で言われたとしても何も文句は言えない。  そもそもネチネチと覚悟できずに「わかってはいるんだけど」なんて、本当にカスだわたしは。 「とにかく、本気でなんとかしないとダメよ? 産むにも下ろすにも、相手に黙ってるのはよくない」  22週以降の人工中絶は、よっぽどの理由がないかぎりは法で認められていない。  っていうか、中絶を視野にいれている時点で自分最低って思うし。  でも一人で産んで育てるなんて無理だし、彼と結婚したとしてもそれから不安だし。  っていうか、彼におろせとか言われたらどうしよう。  結局、先生の真剣な忠告に生返事をして帰ってきて、そして自己嫌悪。  そういえば彼の名前を言ってなかった。  五十嵐良哉(いがらし よしや)。  編集社に勤める同じ歳――30歳。そう、わたしは30歳になる29歳。  もうそんな歳か。いや、でも子供ほしいんだったらさすがに産んどかないと将来が大変だよなぁ。
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