Il mio tesoro

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 揺らぎ揺らいで「よし」って意気込んでもなんらかの瞬間に消沈して。  参考にするといってもう既に結婚して子供がいる友達や知り合いや先輩に話をきいても、あんまり意味がなくて、現実味と「早く決めないと」「なにやってるの自分」というストレスが蓄積されていく。  そして今日こそは言わないとだめだよな、と帰途につくあいだに決めたとしても。  家に帰って、一旦家に帰ってきたのか無造作にモノをとっていっただけでちょっと散らかってて玄関の靴がけとばされてぐちゃってなってたりとかしてるだけでもう「やっぱ別れよう。子供はわたしが育てる」と気分になる。  けど、イスに座って落ち着くとでも一人でなんて本気で育てられるの? ってまたそこに戻って。  着々と大きくなる顔、不規則に抑えきれない爆発的な食欲、カッサカサの肌。  こんな汚い家のままじゃだめだからこの家で育てるなら片付けなきゃ。  っていうかそれめんどいしどうせならスパッと別れて実家に帰ろう。  けど、そんな男と子供つくったなんていったらお父さんカンカンだろうな。  しかも、今の良哉の給料じゃおそらくのちのち困る。  わたしの仕事は中堅会社の事務で、今日は病院に行くからと休んだ。  そして今月中にはやめると理由を伏せて部長には言ってある。  相手との商談中につわりが出たときは死ぬかと思った。  妊娠しといて仕事するなんて馬鹿げてると思われても、言われても、反論の一つもない。
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