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けれど、兄様のことを話せるのが嬉しくて、そんな疑問はすぐに消えた。
「小さい頃はよく一緒に入ってたんだ。でも、兄様が小学三年生になるかどうかくらいの頃だったかな……うん、その頃だ。兄様が、兄弟で入るなんて嫌だって言ってさ。めちゃくちゃ泣いたな、あの時は」
「大好きだったんだね」
「うん、大好き。俺は兄様が大好きだよ。兄様と同じ花園の人間である事に誇りを持ってる」
これは紛れもない事実だ。俺は、花園美一である事以上に、兄様と同じ花園家の人間であることが何より誇らしい。
「でも、きっともうすぐ、俺は花園美一じゃなくなると思うよ」
「何それ?どういう意味かな?」
一華は相変わらず飄々としている。そんな一華に真剣に向き合って、俺は言った。
「俺、風呂に入る前に父様とあることを話したんだ。そしたら勘当されたっていうかさ」
「……何を話したの?」
当たり前だけど、一華は目を丸くしていた。意味がわからないと、顔に書いてあるような、そんな表情。
それがおかしくて、けれど、だからこそしっかりと言えた。
「俺は花園美一をやめる。そして、一華の使用人になって、一華を護るよ」
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