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清宮家と言えば、この界隈で知らない人はいないほどの財閥である。
俺はその家の嫡男で、姉は長女。俺たちは双子のきょうだいだった。
男と女が一人ずついる、と言うのは何とも贅沢なもので、娘を他の財閥にでも嫁がせればその家との繋がりができて、息子に跡を継がせればその家系が途絶えることはない。
今まで長男しか存在しなかったこの家系に、新たな道ができたわけだ。
そして、そんな家に生まれた姉は、一カ月ほど前に、俺と同じ日に十六才の誕生日を迎えた。姉は、これでやっと親孝行ができる、なんて言っていたけれど、俺は姉の本心を知っている。
昨夜、部屋で誰かと電話をしていたらしい姉が、隣の部屋に俺がいることを知りながら、はばからずに叫ぶように言ったのだ。
「お願いだから、もう一度会いたいだけなの!」
きっとそれは、姉が秘密で交際でもしていた相手へ向けての言葉だったんだと思う。次の日、姉の目の下は、泣き明かしたように赤く腫れていた。
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