472人が本棚に入れています
本棚に追加
/210ページ
「その……自分の幸せを、大切にしてください!」
俺がそう言うと一華さんは、少し驚いたみたいに目を丸くしてから顔をほころばせ、俺に飛びかかるみたいにまた抱き付いてきた。
俺は全く状況が判らなくて、焦った。
「君は……本当に綺麗だ。昌」
何を言ってるのだろうか。俺なんかより、一華さんの方がずっと綺麗だ。美人だ。かっこいい。
「僕とは何もかもが違うんだね……昌」
一華さんの背中が小刻みに震えていた。消えてしまいそうな声が耳に残る。
「昌、ごめん……何もしないって言ったのに……僕ね、昌、僕……キスしたい」
「はい……え!?あ、だ、駄目で……」
ハッとなって一華さんを押しのけようとしたけど、それよりも一華さんの方が早かった。
唇が重なる。ドクンッドクンッと、心臓が強く脈打つ。一華さんの柔らかい唇は、まるで吸い付くようだ。
駄目だって思うのに……気持ちがいい……駄目なのに……これじゃあ俺は……。
俺はこの時から……もしかしたらそれ以前からか、絡め取られてしまったのだろうか。
花園の迷宮の奥深くへと、誘われてしまったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!