赤の話

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      (涼しい……) 緑林の中 木陰で安らぐ人が一人 風が銀の髪を靡き 目蓋から赤い瞳を覗かせ 辺りを警戒しながら 彼はそこにいた かつて蛇(ヘビ)として生き 数時間前 妖怪として目覚めた 後に蛇(クチナワ)と名乗る男 何故警戒しているのか… 誰かに追われている? 否 自身が何者か分からないからだ 何故ここにいて 何をしていたのか ここは何処か ただ記憶はあるらしい 地に這いつくばって行動して 獲物を丸呑みし 自身に似た者を眺めて 自身に似た者を殺し 自身に似た者に殺されて (…殺されて……?  ………どうなった?  何故  私だけ這いつくばっている?  ……分からない…) 肝心なことが分からない だが かすかな感情があった それがなんなのかも分からない 怒りか、喜びか悲しみか… 分からないから (憎しみか……) 履き違える    
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