一章、邂逅と好奇。

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七月二十八日。午後一時七分。  黒猫魔王 「お嬢様は、命を狙われているのです」  開口一番。  まさしくそれがぴったり。  それを言われたところで、僕に言わせてみたら「へえ、そうなんですか」で終わるけれど。付録として「大変ですね」をつけてみてもいいかもしれない。  ともかく。いきなりそんなディープなことを言われても、僕としても困る。盛大に。 「……それで、それを僕に言ってどうしたいんですか?  執事くん」 「…………徒花(あだばな)、です」  そうですかとしか言いようがない。何だ、自己紹介でも返せってか。黒猫魔王(くろねこまお)でえす、十六歳でえす、よろしくう。我ながらやる気のなさすぎる自己PRだった。  いやしかし。  件の「お嬢様」が事故に遭ったって聞いて。何でそれを僕に伝えやがったのか皆目見当不能だが病院まで来てやって。で、「お嬢様」の執事らしい奴に病室前で出くわして。  冒頭に戻る、ってか。はは、ぶん殴りてえ。 .
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