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「お嬢様のご両親が亡くなられたのは、ご存じでしょうか?」
「ええ。それは、まあ」
たしか、二年ぐらい前のことだったはずだ。
「家族三人でドライブしてて、信号無視したトラックに衝突して……でしたっけ」
「はい」
詳しくは覚えていなかったが、どうやら正解らしい。
不謹慎な話かもしれないが、王道な話だ。不幸な事故。不幸な少女。
両親は即死。娘は奇跡的に助かった。
「魔王さまもご存じの通り、お嬢様のお父上はそれはそれは世界的にも有名な財閥の社長でした」
「……」
頼んでもいない身の上話が始まった。まずいな。これは最後まで聞かなきゃいけないパターンかちくしょう。
「社長とその奥様が一気に死んで、親族がこぞってお嬢様の身元引受人を名乗り出ました」
「よくある話ですね」
おっと。
正直なお口がつい滑ってしまって、慌ててそれを塞ぐ。
しかしそれが咎められることもなく、徒花さんはまた口を開いた。
「それに嫌気が差したお嬢様は、私を身元引受人として。ですが……」
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