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時は22世紀中頃。季節は冬のこと。今日も学校は開かれている。正門、南門、北門と三つからの登校者は今日も多い。
日本でも北に位置するここでは、寒さも激しく制服の上から上着を羽織る者ばかりが見受けられる。
「あぁ、もう。なんで西門が無いのよ」
「そればかり愚痴ってるね、最近」
「ささっと教室入って暖房よ、暖房! 門が遠いとか……、もう嫌になってくるさ」
「まあまあ、アレ? 今日の授業はなんだっけ?」
「国語、社会――」
――昼休みには、食堂に人が集まる。そこはとても広く、県内でも広めだ、という体育館並みである。むしろそれ以上。
にもかかわらず、満席なのは常日頃の現象であり、新たな昼食スポットは日々開拓されつつある、といえば語弊があるけれども、まさしくそれに近い。
高校の自由過ぎる校風も関係しているのだろう、教師陣もそれを否定することはないとか。
「ふぅ、やっと昼休みかぁ。今日はどこで食べる?」
「そうだね。外は寒いし、涼子は食べ終わったら図書室行くんでしょ? じゃあ職員室とかどう?」
「職員室? まあ、行ってみようか。」
涼子、本名は篠田涼子、彼女は有数の進学校に通っている。将来の夢も漠然、何気なく進学すれば良い、なんて考えていたが。三年生も慣れてきた夏休み前、父親が病に臥して以来、医学を専攻しようと決意していた。
それからは毎日毎日、紺色のブレザーとスカートを着用し学年色の赤いリボンで図書室に向かう二人の少女は印象的で。
「お、篠田じゃないか。今日も図書室か? 勉強頑張れよ。」
「はい、ありがとうございます。」
近く通る先生や、その他知り合いの生徒からはお決まりの光景で、彼女に声がかからないことは無い。
「ねぇ、これ、どうやって解くの?」
「それはね……、ちょっと待って、ノートに図を書くから」
――今や学年でも圧倒的な学力を誇る涼子は、もともと賢かったのだろう。彼女は目標であった世医大、正式には世界医学専攻大学の入学も夢ではなくなりつつあった。
先進国の仲間入りを遂げたエジプトが建設した医大は、もはや、世界最高ランクの大学へと変貌し、日本人も年に4、5人が精一杯である。
校長も学校ぐるみで彼女を支援し、対策は万全、事は順調に運ばれた。
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