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――春の到来まで残り一月。世医大の試験も終わって、どうだった? 受かりそう? エジプトは暑かった? 今日も人気溢れる涼子に、校内放送が舞い降りた。
「3年2組、篠田涼子さん、今すぐ職員室に来てください。もう一度繰り返します。――」
……。場は静まり、それでも、ふと、誰かが呟く。
「なんだろね?」
うん、なんだろ? なんて笑いながら、教室は賑やかさを取り戻すも、涼子は言った。
「ゴメン、ちょっと職員室行ってくるね」
午後の授業、涼子は欠席だった。職員室で交わされた内容を要約すれば。おめぇの父さんが危篤だから、さっさと病院に行け。
涼子の父は、秋頃を境に快方へ向かっていたはずである。話を信じられない彼女はタクシーをつかまえて、病院へすっ飛んで行った。
――母は物心がつく前に亡くなり、父を失うまいと希望し始めた医学。いやしくも合格発表はこの日で。壁も白い病室で父を看取りながら、インターネットを開く。太陽が上がるにつれ緊張は増すばかり。
日本時間午後2時。光が当たって橙に輝く壁を背中に。彼女は受験番号を照らし合わせて、合格を確認。
「お父さん、やったよ! 合格したよ!」
娘が泣きながらの合格報告を聞き届け、その笑顔を胸に焼き付けた彼はついに事切れた。少女の泣き声は響き続け――。
パソコンの影となった壁はやはり薄暗い……。
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