一章

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 転生、とか言うのだろうか。知人が小説好きで、こういうのが特に大好きなんだ、とか言ってたのを未だ覚えてる。  けど、やはり不可解なことには違いない。  ……生まれ変わって、少年らしさを取り戻した、というよりむしろ新しい自分を確立してるのではないだろうか。  けれど記憶に残った自分というのはどうしても消せないんだと。そう実感せざるを得ないのは、十年も生きると、認めるしか無い。  髪が夕焼け空のような色に染まり、顔は不思議と整っていて、周囲の環境も、何もかもが違ったとしても。無意識に浮かぶことがある。 「ついに十歳なのね、ディー」  ――私の名前は、ディーン・イグニ。愛称はディー。性別は男、特技は瞬間記憶。  母はずいぶん賢く育ったもんだ、なんてよく褒めるけど、至上の記憶力を利用しただけだし、何より前世があったのが強みであった。  それに、ここは文明レベルの低さがところどころで目立つ。どうしてもボロが出ないようにするには、内面の常識を捨てるしか無かった。    十歳は大切な時期だ。学園へ通い始める年らしい。誕生日なんて概念も無く、エー・イ、つまり4月1日を過ぎた回数が年齢そのものだ。これを記念として、子供達は、この日が休日であるらしいのだが。  どうしてか、同年代の子供は近くにいない。そういったことも含め、学園行きは本当に楽しみで仕方がない。
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