一章

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 ――入学式は開催された。壇上で学園長が語っている。いかにここが素晴らしくて、いかに人が素晴らしいのか。私に言わせれば親向けの挨拶であって、決して十歳に伝えるものではない。なのに、ここ(エーヴェテ)では入学式は入校したものだけが参列する風潮が濃い。  朝、食事を終えたあと、父が言ってた言葉を思い出す。 「入学式は寝といて良いぞ。新入生はただ座るだけで問題無いし、寝てようが誰も文句言わねえ」  周りを見渡せば、大概半分はこっくりこっくりだし、熟睡してる奴も多い。  まさにあの通りだけど、正直に言えば、プライドが長話を耳に入れないなんてことを許さず、聴覚に神経を集中させるしかなかった。  付近で暮らしていた人達に、ディーンは大人びているねぇ、なんて類いも自分のプライドを形成している。そう思うと、私は子供か。なんてツッコミたくなるが、事実、そうだからなんとも言えない。  こんなふうに、ワケのわからないことを心の中で愚痴ってたら、どうやら終わったらしい。  頭の中に伝わる声はそのまま突き抜けてたことなぞ、どうでもいい。 「クラス発表を行いますのでグランドにお集まり下さい」  司会のソプラノボイスは、妙に透き通っていて、あんな声が先生なら良いな、と思う。  校庭に出てみると、学園の広さが顕著になる。寝坊をやらかして、遅刻寸前を因にコレをしっかり目に映すのは初めてだ。  東にチラッと見える寮。八年お世話になるそれは、並々ならない大きさ。いわば、新しい家に相当するのだから、内装も見事であるに違いない。  西の門先に広がる学園都市。きっと友人らと共に何度も遊びに行くだろう。昼食や、買物など。ワクワクしてたまらない。  南には深くそびえる巨大な校舎。言葉では形容出来ない形をしている。けれど、センターで鋭く天に伸びるそこに飾られた時計はカッコいい。  北は正門。ここから入り、ここから出る。ただそれだけ。なのにそれは荘厳で、圧倒されるばかり。学園カラーの金色が彩色されてるのも、助長しているのかもしれない。
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