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人は、変わるもの。他人に対してそう考えるには、長い間のつき合いがないと、感じられない。
家族、幼なじみ、そのあたり。
変わるには、それなりのエネルギーが必要。エネルギーなしではなにも起こらない。
それと、変わるための理由が必要。理由もなしにいきなり人が変わるわけがない。
「……んや」
声。
「喜多川信也」
「あ、あぁ」
「どうした?」
「どうもしてない」
「ぼーっとしてたぞ?」
「かわらないなぁって」
「なにが?」
「俺たち」
俺たちは、何年経っても、変わらない。
「幼なじみって、そんなもんだろ」
俺たちは、小学生の頃からの友人だった。
とりわけ、俺たちは仲がよかった。
「変わったとしても、毎日会ってんだから、気づかないんだろうよ」
広瀬孝介は空を見ながら言った。夕焼け空。赤く、美しい。
「で、なんだった?」
さっき、孝介が何か言っていたのを思い出した。
「あぁ。コンビニ、よらね?」
「またなんで?」
「いいじゃん。高校生らしいしさ!」
俺たちはまだ、高校一年生。孝介はよく、「かっこいいよなぁ。帰り際のコンビニ」って言ってたっけ。
「いいよ」
「っしゃぁ!」
「そんなにか?」
「おうよ!」
孝介は早歩きになってる。俺も、早歩き。
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