6人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「君は…何故ここにいるの?」
拓海が女の子に質問すると、血を流し終わった彼女は、眉を歪ませた。
「君こそ、どうしてここへ?」
「僕は遊びに来たんだ。いつも来てるんだ、いつもね」
拓海は自然に彼女の隣に座った。拓海も彼女も、同じ5歳だが、ふたりはどこか大人びていた。
「そうなんだ…私は糸川雪乃、君は?」
「河野拓海、よろしく」
拓海は笑顔を見せたが、雪乃は「河野拓海…」と呟きながら難しい顔になった。
「今じゃみんな、外に出ない。こんなに綺麗なのに」
流れる河を見つめながら、拓海が言った。
「うん‥あんな事件があったから」
「そうだね…」
少し笑顔を見せた彼女に、気持ちが暗くなった。彼女はもう死んでいるのだ。彼女は、自分が死んだと気づいた時、どんな思いで受け入れるのだろうか。
それからしばらく、ふたりは会話を交わした。
最初のコメントを投稿しよう!