夏の陽

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「でも、なんで雪乃は、僕を見つけて誰にも言わなかったんだ?」 「言ったよ。でもみんな、無視してた」 その時、父に向けて言った言葉が、頭によぎった。 「行ってきます」 父は縁側に座り、拓海のその言葉を無視した。まるで、もともとその言葉は発せられなかったように。父は、返事を返さなかった。 再び河を見ると、拓海の死体の陰に隠れていた、もう一艘の笹舟を発見した。 「進むのをやめた魂がもうひとつ…あれは、君だろう?雪乃…」 「うん…どうやらそうみたいね…私達、死んだんだ」 結局初めから、互いに思っていた事全て、真実だったのだ。でももう、拓海は怖くはなかった。 ふたりは一回笑い合ったあと、互いに笹舟を掴んだ。 村を流れる河に、二艘の笹舟が流れていった。 完
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