『 騙す食材、騙される美食家 』

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「あー、残念。今日も落ちなかったな。おお、神様はなんて意地悪なんだ」

わざとらしく大袈裟なリアクションをすると、ガジは凄く凄く残念そうな顔をした。

『初めまして。貴方のほっぺたを食べたいんですけど』

『まだ熟れてない？なるほど。美味しい料理を？なるほど』

あの日から、私は毎日毎日豪華な料理を食べ続けていた。
我ながら上手くやったと思うよ。

『……分かりました。絶対に落としてやりましょう』

しかし最近、ガジの料理の腕が上がってる気がする。
食事中、何だか頬に違和感を感じる時がある。

『ほっぺた、早く食べたいなぁ』

……。

期待に応えて本当にほっぺたが落ちるのが先か、ガジが我慢しきれずに喰いついてくるのが先なのか。

その日が来るまで、私は純粋なコイツを騙し続けて、純粋なコイツに怯え続けるんだろうな。