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あれから一週間後の週末。
特にする事も無く、僕はベッドに寝転がり、本を読んでいた。
今日初めて開いたソフトカバーの本が中盤に差し掛かった頃、机に置いたままだった僕の携帯が振動した。
黒のボディに着いている小さな画面が青く点滅している。
どうせ誰かからのメールだろうと無視を決め込もうとしたが、一向に止む気配のないバイブに疑問符を浮かべる。
もしかして、電話か?
僕はゆっくりと起き上がり、未だに震えるそれを手に取った。
そして、小さな画面に表示された名前に瞠目する。
…まさか。彼女が僕に電話なんてかけてくるはずがない。
しかし振動と共に表示された文字は何度見ても変わらない。
僕は意を決して、携帯を開いた。
「――もしもし?」
『よかった、っ出て、くれたっ』
ひっくと嗚咽を零しながら彼女は電波の向こう側で言った。
酷く震えるその声に、僕は息を呑んだ。
「…何があった?」
どうした、とは訊かなかった。彼女は、なんでもないと答えるから。
弱みを見せたくない気持ちはわかるが、たまには誰かに甘えて欲しい。
『…あのね、あの人が今日――ちゃんと遊ぶって。』
ずっと前から、約束してたのになあ。
呟かれた言葉は寂しさを孕んでいて、僕は思わず拳を固く握った。
僕の中で、今まで抱いたことのない激しい感情が生まれた。
あいつを、殺してやりたい。
向こうの女の名は聞き取れなかったけれど、恐らく僕達と同じクラスだ。
ということは、彼女達の関係も知っているだろう。
彼女から幸せを奪うなんて、許せない。
「とりあえず、僕からあいつに連絡してみる。」
涙はどうにか押し込めたらしい彼女は、うん、と小さな声で返事をした。
続いてありがとうと言われて、僕はどういたしましてと返した。
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