追憶

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酷い暴言を吐いた。 あいつは僕と小学生からの付き合いで、喧嘩だって一度もしたことがなかった。 それなのに。 『彼女の約束破って、他の女と遊んでるんだってな。 お前、彼女がそれ聞いたとき、傷付かないと思ったのか? 今日の約束、彼女と付き合う前からしてあっただろう。彼女が、お前に遊ぼうって誘うことにどれだけ勇気を振り絞ったか、お前わからないのか? 言葉にしなきゃ、察せないのか? 彼女、お前が約束を承諾したことを嬉しそうな顔で僕に話してくれたよ。 どうやって誘おうか悩んでる彼女の相談にだって乗った。 あの時まで、彼女は確かに笑顔だったのに。 それなのに、彼氏のお前が、なんで彼女を泣かせてるんだよ!』 思ったことを、そのままメールの文面に書き殴った。 僕は饒舌とは冗談でも言えないから、直接これをあいつに伝えきれる自信が無かった。 八年続いた友情が、ここで途絶えようが、僕にとってはどうでも良かった。 苛つきを込めて送信ボタンを押す。 送信完了を告げる画面を確認して、携帯を閉じる。 ざわつく心をごまかすため、僕は無意味に何度もフラップの開閉を繰り返した。 .
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