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あれから数分後、あいつから返信が来た。
『なんで怒ってんの?』
元々、あいつは他人の心に鈍感な節があった。
この時初めて、協力を求めてきた彼女に承諾した僕を殺したくなった。
彼女が泣く原因を作ったのは、他でもない僕自身だったのだ。
どうだった?
少し期待の混じった色を感じられる声音で、彼女からまた電話がかかってきたのは、日の沈みきった頃だった。
僕が彼に送ったメールの内容も、その返事も全て偽り無く伝えた。
彼女が、静かに涙を流す音がした。
僕は、彼女に甘い言葉だけをかけた。
彼女の心は弱っていた。
否、初めから強くなどなかったのだが、だからこそ、限界が来ていた。
『あたし、あの人と、…別れる』
震えた声でそう言った彼女に満足感と罪悪感が同時にやってきた。
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