癒しの都

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「言い変えるならば、光と闇。正と負。 交ざり合う事のない物が混ざった時、強大な力が生まれる。 そのいい例が、巫女狩りをした鬼です…。」 その名に、乙葉の目付きが更に鋭くなった。 瞳の奥が鈍い光を放ち、強い怒りを抱く。 「宣戦の書に触れ、わたくしの妖力は強くなった。 それと同時に、この計画を思いついたのです。」 「それがワシから指輪を奪い、おなご達の魂を集める事か……?」 「えぇ。」 五組の眼差しに睨みつけられるにも関わらず、淡々とした楼蛾の態度。 「貴方から指輪を盗んだ後、しむろが作った`霊力を持つ者が飲むと酔ってしまう酒´も盗み出し、強い霊力を持つ者をこうやって少しずつ集め、霊力ごと魂に変えてきました。 あまり霊力を持たない者を帰す事により、店に対する不信感を持たせないよう配慮もしました。」 「ちまちまと、下らん事にワシの力を悪用しおってッ……。」 「失敗だけはしたくはないので。」 沙羅の悔しそうな表情に、楼蛾はふふふ…。と優越感に浸たっているように笑うと再び指を鳴らした。 すると、床から大量の美男子達が湧いて出てきた。 中に、門番二人やお酒の相手をしていた矢一など、店にいる美男子が集合しているようで、数はざっと見て五十人。 一人一人、武器を持ち、その表情に先程までの生気は感じられない。 「巫女殿、風の噂で聞いておりますよ。 兎の姫と野蛮な蛇を退治したと……。 是非とも、あなたの霊力が欲しい。」 そう言う楼蛾の隣には、いつの間にか一つの繭があった。 そして中には…… 「かなちゃんッ!」 眠るように浮かぶかなの姿。 拓斗は顔色を変え思わず走り出したが、宮の手により制御された。 .
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