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「下にいる者をここへ連れて来てくれないか?」
「クゥゥー……。」
式神は一鳴きすると大きな翼を広げ、崖底へと降りて行き、暫くするとあたふたしている勇太の父の襟を咥えて帰って来た。
「おとう!」
「勇太!」
勇太の父が地面に降ろされると、勇太は直ぐ様飛び付き、父の胸へと顔を埋めた。
「ありがとうございます。巫女様。」
勇太を抱き締め、勇太の父は深々と頭を下げる。
「巫女様じゃないよ。乙葉様だよ。」
「そうか、乙葉様か。私は栄太(えいた)と申します。」
「無事でよかった。
でも、足もを怪我しているようだな。
軽くだが、お主の怪我の治療をしよう。
家に案内してもらってもよいか?」
「ありがとうございます。助かります。」
言い終わったとたん、栄太と勇太の体が宙に浮いた。
見ると式神にまたもや咥えれられており、そのままふかふかな背中にそっと降ろされた。
「ふかふかだぁ!」
ふかふかな背中を気に入ったのか、先程とは打って変わり勇太は無邪気な笑顔を見せ、そんな我が子を見て栄太も笑顔を浮かべた。
「では行くぞ。案内を頼む。」
「分かりました。この道を真っ直ぐです。」
※
山中を進む乙葉達の周りを、不気味な影が草木に隠れ一緒に進んで行く。
次の瞬間、それは勢いよく飛び出し、乙葉達目がけ突っ込んで来た。
「乙葉様!!よっ、妖怪の群れがッ!」
【【【【クワ…クワゼロォオオオ!!!!!!!!!!!!】】】】
影の正体は十以上の虫型の妖怪。
奇抜で不気味な風貌のそれらは、群れとなり物凄い勢いで乙葉達を喰らおうと迫り来る。
恐怖を目の前にし、栄太、勇太は体が凍り付く。
がっ!
バチッ!!
【【【【ギャャアァアアァアアッ!!!!!!!!!!!】】】】
半円状の発光体が乙葉を中心に現れると、栄太と勇太を囲み、発光体に触れた妖怪達は一瞬にして消し飛んだ。
突然続きの出来事に、栄太と勇太は何が起きたのかと周囲を見渡し、とりあえず妖怪達がいなくなった事は理解できた。
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