あの世の洞窟

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「グゥオラアアアアアアアアアッ!! 暫ーーーーーッ!!!!!!!!!!!!」 岸の方から、照夜の怒り狂う怒鳴り声が聞こえてきた。 鬼の形相で此方を睨みつけ、右手には怒りによって無残に潰された文が握り締められていた。 「あっ!兄上ーっ。」 「『あっ!』じゃねぇええッ!! 今すぐ帰って来いッッ!!!!!」 「嫌だッ!!オイラ乙葉様と一緒に行く! もう決めたんだ!!」 「んだとテメーッ!!!」 怒りが最高潮に達してたのか、発散しきれない怒りに照夜の体が震えだす。 「クソ巫女ッ! よくも俺の可愛い暫をたぶらかしたなッ!! そこで待ってろ!ぶッッッ殺してやるッ!!!」 「おっ、こんな所に新しい弓と矢が。 よし、試しにあやつを狙うか。」 全力で弓と矢を構える乙葉。 「乙葉様!!止めてくださいっ!」 笑えない程真剣な眼差しの乙葉を前に、すかさず栄太が止めに入った。 「お前は俺の弟、それじゃ不満かッ!?」 「そんなんじゃない!」 「じゃぁッ!ここに残れよッ!!!!」 照夜の声に力がこもる。 「安心して兄上っ! オイラが何者か分かっても、オイラの故郷はこの村だ!!」 「暫っ……。」 「血が繋がってなくても、オイラは兄上の弟だ!!」 その言葉に照夜の動きが止まった。 数秒後、口から大きな溜め息が漏れ肩の力が抜けた。 「……って……い…よ…。」 「んっ?兄上聞こえなーい!」 下がりつつあった照夜の頭が、勢いよく上げられる。 そして 「無事に帰って来いよっ!」 満面の笑顔でそう伝えた。 「うんっ!兄上、行ってきます!!!」 兄に負けじと満面の笑顔を浮かべ、手を大きく振る暫永。 こうして暫永が仲間に加わり、新たな旅が始まった――… .
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